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(2024年8月 更新)
外国人の方が日本で会社を設立する場合、株式会社か合同会社のいずれかになると思いますが、今回は合同会社の設立について解説を行っていきます。
現在、留学生で卒業後に日本で会社を設立したい方や就労ビザで働いているけど最終的には日本で会社を設立したい方たちの参考になればと思います。
目次
経営・管理ビザの取得を考えた時にまず問題になってくるのがビザを先に取得するのか、会社の設立を先に済ませるのかということです。
答えとしては先に会社の設立をすることが必要になります。
それは経営・管理ビザを取得する際の基準に
① 事業所存在・確保基準
② 事業規模基準
③ 管理基準
の3つがあるためです。
会社を設立して経営者として活動を行っていくには①②の基準を満たさなくてはいけないことになっており、先に会社を設立してその会社が実際にちゃんと存在しているのか、求められる事業規模なのか、という事を確認したうえでビザが許可されることになっています。
合同会社を設立する場合の流れについてですが、
① 会社の基本事項を決める
② 定款を作成する
③ 資本金を振り込む
④ 法務局へ法人設立登記をする
⑤ 税務署に各種届出をする
⑥ 各種許認可を取得する ( 必要な場合 )
⑦ 経営・管理ビザの申請
⑧ 年金事務所・ハローワーク・労働基準監督署へ各種届出
という流れになっております。
まずは基本事項を決めるのですが、その一例をご紹介すると
・会社名 (商号)
・会社の住所
・事業目的
・発起人 (株主)
・発起人の出資額
・役員構成
などとなっておりますが、注意しなくてはいけないことが何点かありますので下記に挙げていきます。
外国の方が会社を設立するわけですから母国の文字を使用したいという希望もあるかもしれません。
ですが、以下に示したように使用できる文字には制限があり、例えばハングル文字などは使用を認められておりません。
使用できる文字 | 使用できない文字 |
・ひらがな、カタカナ、漢字 ・英語アルファベットの大文字、小文字 (A、B、C、a,b,cなど) ・アラビア数字 ( 0.1.2.3など ) ・限定された一部の文字 (「・」「,」「.」「‐」「&」「‘」など ) ※ただしこれらを会社名の先頭には使えません。 | ・ハングル文字、中国簡体字など ・公序良俗に反する言葉 ( 詐欺、暴力団、売春など ) ・支社や部署などの会社の一部 ( 株式会社○○支社など ) ・同一住所での同じ名前や類似した名前 ・商標登録されている商号 |
会社の住所は自宅でも自宅とは別の場所に事務所を借りるでも問題ありませんが、経営・管理ビザの取得を考えると自宅での開業は認められないことが多い傾向にあります。
ただし、1階が事務所で2階が居住スペースになっており、事務所の看板などをちゃんと掲げているなど居住スペースと事務所がしっかり区切られている場合は許可される可能性があります。
また、事務所がなかなか見つからずとりあえず会社を先に設立する場合は初めに自宅の住所を会社住所として登録してしまい、その後に別の場所に事務所を賃貸してから、住所を移すことも可能ですが、後で変更登記が必要になるので別途費用がかかってしまいますので、初めから事業用として自宅とは別の場所に事務所を確保しておくことをオススメいたします。
事業目的は、定款といういわゆるルールブックに記載しなくてはならないものになります。
その会社がこれから何を行っていくかを記したものになり、その内容に記載された範囲でしか事業を行うことができません。
事業目的の決定にあたっては「営利性」「適法性」「明確性」という3つの内容をしっかり意識して作成することが必要になります。
「会社の基本事項を決める」の内容などを定款に盛り込んでいきます。
定款に記載する内容には「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類があります。
「絶対的記載事項」 → 記載しないと定款自体が無効になるもの
「相対的記載事項」 → 記載しなくても定款の効力には影響しないが、記載しないとその事項の効力が認められないもの
「任意的記載事項」 → 記載しなくても良い事項で、定款外で定めてもその事項の効力が認められるもの
「会社の基本事項を決める」に掲げた事項は「絶対的記載事項」なので忘れずに定款に記載しましょう。
その他にも発行可能株式総数の定めも「絶対的記載事項」になりますが、こちらは会社の設立時までに記載すれば問題ありません。
発起人の個人口座 に振り込むことになります。
発起人の個人口座についてですが、資本金の振込みができるのは
・日本の銀行で日本国内にある本店、支店
・外国の銀行の日本国内の支店
・日本の銀行の海外支店
となりますので注意をしましょう。
なお、短期滞在ビザを取得してその期間の間に上記の銀行口座を開設しようとしても、マネーロンダリングの問題から開設できませんので、もともと他のビザで日本に在留している場合以外は、日本国内に協力者が必要になります。
必要書類を一式そろえて会社住所地を管轄する法務局にて会社設立の登記申請を行います。
登記申請日が会社の設立日になります。
時期にもよりますが、特に補正がなければ申請してから1週間から10日程で登記事項証明書というものが取得できるようになります。
主な必要書類としては
・登記申請書
・登録免許税納付用台紙
・定款
・発起人の決定書
・代表社員の就任承諾書
・会社代表印の印鑑届出書
・代表社員の印鑑証明書
・資本金の振込みがあったことを証する書面
・印鑑届証明書
・登記すべき事項を記載した書面又はCD-R
となっております。
なお、法務局で必要になる費用については
謄本手数料 → 1枚250円。おおむね8枚で2000円
登録免許税 → 6万円か出資額の1000分の7のいずれか高い額
資本金額が850万円に以上であれば出資額の1000分の7で出た額が登録免許税となります。
「法人設立届」「給与支払事務所等の開設届」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」などを届け出ることになります。
これらの控えはビザの申請時に必要となりますので、しっかり保存しておくようにしましょう。
職種によっては許可を取得しなければ営業することができないものもありますので、こちらも忘れず行うようにしましょう。
よくある例としては
・飲食店営業 → 飲食店営業許可
・ペットショップ → 第一種動物取扱業
・中古車販売 → 古物商許可
などが必要になってきます。
ここまで来てようやく「経営・管理」ビザの申請となります。
個人の状況に合った必要書類を準備して申請を行いましょう。
こちらはビザの取得には関係ありませんが、忘れず各種届出を行いましょう。
今回は合同会社の設立について解説でした。
株式会社の設立に比べると合同会社の方が手続きの数が少なかったり金額の面でも株式会社よりも費用が抑えられるというメリットがあります。
その反面で知名度が株式会社に比べると劣ってしまうなどのデメリットもありますので、よく考えたうえで株式会社と合同会社のどちらかを選んでいただければと思います。
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