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(2024年7月 更新)
経営・管理ビザの取得を目指されているお客様からのお問い合わせの中で多い業種の一つに『 飲食店 』があります。
今回はそんな飲食店での経営・管理ビザの取得を目指す場合に気を付けなくてはいけない点などについて解説を行っていきます。
他に経営・管理ビザでお問い合わせが多い、貿易会社やマーケティング会社などとは注意しなくてはならない点も異なってきますので是非、参考にしていただけると幸いです。
外国籍の飲食店という言葉を聞くと「 外国人の方が料理をしている 」というようなイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、私も中華料理やネパール料理が好きで食べに行くことが多いのですが、たしかに調理場には外国人の方が調理をしているのをよく見かけます。
では、それらの料理人の方( 外国人の方 )は飲食店の経営はできるのでしょうか?
答えは『 できる場合もある 』です。
この答えを聞くと煮え切らないような答えと感じた方もいらっしゃるかもしれませんので、詳しく説明をしていきます。
外国籍の飲食店で調理を行っている外国人の方の多くは技能ビザをお持ちの方です。
技能ビザでの活動は『 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動 』とされています。
そのため、技能ビザでは飲食店の経営をすることは認められていません。
もし技能ビザをお持ちの方が飲食店の経営を行おうと考えた場合は、何パターンか方法は考えられますが、一般的には技能ビザから経営管理ビザへの変更をすることが必要になってきます。
その他には就労制限のない永住者や永住者の配偶者、日本人の配偶者等などに変更することも経営するための方法として考えられますが、「経営がしたいから就労制限のないビザにする」というのはあまり一般的ではありません。
そして、逆に就労制限のないビザであれば飲食店で調理を行うことができますので、その場合はビザの変更をせずとも飲食店の経営を行うことができます。
ということから『 できる場合もある 』という答えになっておりますので、ご自身のビザの種類から経営するための方法を検討することが必要になってきます。
日本人が飲食店を経営する場合には『 飲食店営業許可 』や場合によっては『 防火管理者 』の資格を取得する必要があり、これは外国人の方が飲食店を経営しようとした場合にも必要になってきます。
そのため飲食店で経営管理ビザを取得したい場合には、これらの許可等も得ることが必要になります。
飲食店を経営する場合は、「飲食店営業許可」を取得する必要があります。
飲食店営業許可を取得するには食品衛生責任者の設置と保健所の許可の2つをクリアする必要があります。
まずは食品衛生責任者についてですが、これは食品の衛生管理を行う者になり、1つの店舗で最低でも1人以上は置かなくてはいけません。
食品衛生責任者になることができる者は調理師、栄養士、製菓衛生士などの資格を保有している方と食品衛生責任者養成講習会を受講した方になります。
ちなみに食品衛生責任者養成講習会については、外国人の方でも日本語が理解(読み・書き・会話が)できる方であれば受講することができます。
受講スタイルは『 会場集合型養成講習会 』『 eラーニング型養成講習会 』の2パターンがあります。
詳しくは各地域の食品衛生協会のHPをご覧いただければと思います。
1日もあれば資格の取得ができ、受講料は仙台では10,000円、東京都では12,000円と各地域によって違いがありますが、大体10000円前後かかります。
経営・管理ビザ取得の場合に誰が食品衛生責任者となるべきか、という問題がありますが、一番は申請人が食品衛生責任者となるのが良いと思います。
ですが、認定でビザの取得を目指す場合は申請人は日本にいない状態なので、申請人が食品衛生責任者となるのは難しいです。
そのため実際は日本での協力者の方で一時的に取締役になる方か、従業員となる予定の方が食品衛生責任者になるというパターンが多いです。
ただし、どちらのパターンでも最終的には申請人が食品衛生責任者となることをオススメいたします。
というのも、多くの場合は申請の際の日本での協力者はあくまで会社設立等の関係で一時的に取締役等になっているに過ぎませんので、申請人の来日後は速やかに取締役等を退任することが必要ですし、従業員の方が食品衛生責任者となる場合も、その従業員の方が退職してしまうと食品衛生責任者が不在となってしまいます。
そのため、最終的には経営者となる申請人である外国人の方が食品衛生責任者となるようにしましょう。
次に保健所の許可についてですが、各管轄の保健所に申請をして検査に合格する必要があります。
流れとしては
① 保健所に事前相談をする
② 営業許可の申請を行う
③ 保健所による店舗の検査
④ 飲食店営業許可書の交付
となっております。それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
工事が着工する前に予定する店舗が保健所が定める基準に適合しているかを相談するようにしましょう。
着工後に基準に適合していないとなると設計や工事のやり直しが発生する可能性もありますので、相談の際には店舗の平面図や設計図を持っていくようにしましょう。
仮に相談の結果、基準に適合していないとなった場合には、担当者の方に基準に適合するためにはどのような改善が必要なのか等のアドバイスを受けて改善する必要があります。
保健所に事前相談をし、店舗の工事が始まったら飲食店営業許可の申請に必要な書類などの準備に取り掛かりましょう。
申請書類は各自治体のHPなどでダウンロードが可能となっております。
記入後は添付書類とともに申請をすることになりますが、各地域によって申請時期が異なりますので、申請書類のダウンロード時にしっかり確認をしておくようにしましょう。
営業予定の店舗が基準に適合しているかどうかを保健所の担当者の方が検査を行います。
もしこの検査で基準に適合していない場合は、改善後に再検査を行うことになります。
保健所による店舗の検査の結果、基準に適合していると判断されると、管轄する保健福祉センター衛生課等から営業許可証が交付されます。
これで店舗の営業が行えるようになりますが、営業許可証はお店の見やすい場所に掲示しておくことを忘れないようにしましょう。
次に防火管理者についてですが、防火管理者とは多数の者が利用する建物などの「火災等による被害」を防止するため、防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理上必要な業務を計画的に行う責任者を言い、どのお店でも必ず選任しなくてはならないわけではなく、一定の要件に当てはまる建物の場合にのみ選任して消防署に届出る必要があります。
防火管理者の要件は
① 防火管理業務を適切に遂行することができる「管理的、監督的地位」にあること
② 防火管理上、必要な「知識・技能」を有していること
とされています。
②の必要な知識・技能は、一般的には防火管理者講習を受講して修了することにより要件を満たすことができます。
防火管理者には「甲種」「乙種」の2種類がありますので、ご自身の店舗ではどちらが必要なのかをしっかり把握してから講習を受講するようにしましょう。
※ 建物が300㎡以上の場合は甲種。300㎡未満の場合は乙種。となりますが、従業員を含めた店内の収容人数が30人以下の場合は防火管理者の選任は不要となります。
飲食店のような店舗系の業種で経営管・理ビザの取得を目指す場合には、営業する店舗が確保されており、ビザの取得後にはすぐに営業できる状態にしておく必要があります。
先述した飲食店営業許可に適合したものになっていることは当然ですが、経営・管理ビザの観点から見ると日本人が飲食店を経営する場合と違った注意点があります。
それは事務作業を行うスペースが確保されているか、ということです。
このスペースは店舗の一画をパーテーションで区切ったようなものでは確保しているとは認められず、事務所としての部屋が設けられていることが必要です。
もしそのような事務作業を行うスペースが店舗に確保できない場合には、費用はかかってしまいますが、店舗とは別の場所に事務所を借りるようにしましょう。
経営・管理ビザはあくまで、経営と管理を行うためのビザとなります。
そのため飲食店での調理や接客業は原則として行うことはできませんが、経営・管理ビザの活動の一環としてやスタッフの病気などで欠員が発生した場合には一時的に現場に入ることはできます。
ただし、ビザの申請時に日常的に調理や接客を行うスタッフを雇っていなければ入国管理局から雇っていない理由を追加で説明を求められてしまいますので、それらを行う従業員の確保もしっかり行い、事業計画書で説明するようにしましょう。
なお、出資金が500万円以上であれば、スタッフはアルバイトでも大丈夫ですが、外国籍の料理店の場合は技能ビザを取得した外国人の方をスタッフで雇うこともあるかと思います。
その場合には当然ながら技能ビザの要件に適合していることが必要なので、その点には注意をしましょう。
※ 技能ビザについてはこちら。
今回は飲食店で経営・管理ビザの取得を目指す場合について解説を行っていきましたが、飲食店などの店舗系の事業の場合は事務所だけ準備すれば良いというわけではなく、店舗を確保し各種許可の取得や従業員の確保など多くの手間がかかる分、ビザが不許可になれば多大な損害が出てしまいますので、今回のコラムを是非参考にしていただけると幸いです。
また、どうしても不安な場合には行政書士などのビザの申請を専門的に行っている者に依頼することをオススメいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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