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effortコラム

2024年07月10日経営・管理【仙台市】スタートアップビザについて

スタートアップビザとは

「日本で起業しよう!」

このように外国人の方が考えた場合、ビザの取得には下記の4つのパターンがあります。

① すでに何かしらのビザで日本に在留中の方が経営・管理ビザへ変更をする(永住者、日本人の配偶者等などであれば、そのままでも起業できる)

② 外国人の方が本国にお住いの場合は、日本にいる協力者に会社を設立してもらい、認定申請をする

③ 4カ月の経営・管理ビザで来日し、4カ月の間に経営・管理ビザの要件を満たし更新をする

④ スタートアップビザを取得して日本で会社を設立してからビザの変更等をする

となりますが、今回は④のスタートアップビザについて解説を行っていきます。

実際、この制度はあまり知られていない部分もあるうえ、利用できる地域も限られております。

さらに、利用できる業種や求められるものも地域によって多少の違いがあるため、今回はeffort行政書士事務所から近い『仙台市』に焦点を絞って解説を行っていきます。

仙台で起業しようとお考えの外国人の方は是非、今回のコラムを参考にしていただければと思います。

スタートアップビザは2種類

仙台市で取得が可能なスタートアップビザは経済産業省認定事業によるスタートアップビザ国家戦略特別区域によるスタートアップビザの2種類がありますので、まずはそれぞれどのような内容なのかについて見ていきましょう。

経済産業省認定事業によるスタートアップビザ

仙台市のホームページを見てみますと、

 スタートアップビザは、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図ることを目的とした制度です。仙台市は、経済産業省の「外国嗣企業活動促進事業に関する告示」に基づき、外国人企業活動管理支援計画を策定し、「外国人起業促進実施団体」として認定を受けました。

 市内で起業を目指す外国人の方は、本制度を利用することで、最長1年間、起業準備のため日本に在留することが可能となります。

 起業を行う外国人が「経営・管理」の在留資格の認定を受けるためには、出入国在留管理局への申請時に、事務所の開設に加え、常勤職員を2人以上雇用するか、資本金の額または出資の総額が500万円以上となっているなどの要件を整えておく必要があります。

 スタートアップビザでは、その要件が整っていなくても、起業活動計画書等を仙台市に提出し、要件を満たす見込みがある確認を受け、その確認をもとに出入国在留管理局が審査をすることで、最長1年間(6か月後に更新が必要)の「特定活動」の在留資格が認められます。

とされています。

国家戦略特別区によるスタートアップビザ(仙台市)

仙台市のホームページを見てみますと、

 「スタートアップビザ」は、外国人の創業を促進するために、国家戦略特区に指定されている仙台市が特例的に認められた制度です。日本で創業する外国人に必要とされる「経営・管理」の在留資格の認定要件が、仙台市(国家戦略特別区域)で創業活動を行う場合に緩和されます。

 創業を行う外国人が「経営・管理」の在留資格の認定を受けるためには、出入国在留管理局への申請時に、事務所の開設に加え、常勤職員を2人以上雇用するか、資本金の額又は出資の総額が500万円以上となっているなどの要件を整えておく必要があります。

 「スタートアップビザ」では、その要件が整っていなくても。創業活動計画書等を仙台市に提出し、要件を満たす見込みがあるなど、仙台市からの確認を受け、その確認をもとに出入国在留管理局が審査をすることで、6カ月の「経営・管理」の在留資格が認められます。

となっております。

2つのスタートアップビザの比較

2つのスタートアップビザの大きな違いとしてはビザの種類在留期間の違いがあげられます。

経済産業省認定事業の場合は「特定活動」のビザで最長1年(6か月後に更新あり)の在留期間であるのに対して、国家戦略特区の場合は「経営・管理」のビザで6カ月の在留期間です(「特定活動」と「経営・管理」の違いによって行える活動内容に違いはありません)。

これだけをみると「どうせなら在留期間が長い経済産業省認定事業の方が良いのでは?」とお考えになる方も多いのではないでしょうか。

2つのスタートアップビザには他にも異なってくる部分がありますので、それぞれ見てみましょう。


スタートアップビザの対象者

経済産業省認定事業

仙台市内で新たに事業を始める外国人の方(学歴又は職歴の条件あり)

すでに他のビザを持って日本に在留している方(例「教授」「研究」など)も対象。

国家戦略特区

仙台市内で新たに事業を始める外国人の方

原則として留学を除いた他のビザを持って日本に在留している方は対象外。

対象者の比較

それぞれ仙台市内で新たに事業を始める外国人の方が対象ですが、経済産業省認定事業の場合は学歴又は職歴の条件ありとなっているので、起業しようとする事業に関連する学歴や職歴をお持ちでなければ対象とならない点には注意が必要です。

その他にも経済産業省認定事業の場合は、すでに日本に在留している外国人の方も対象としていますが国家戦略特区では原則として新たに日本に来日して起業する方のみを対象(留学ビザで日本に在留している方を除く)としているという違いがあります。


スタートアップビザの対象事業

対象事業については経済産業省認定事業、国家戦略特区共に違いはなく、下記のとおりとなります。

知的創造型産業

例:半導体関連、ソフトウェアの開発、コンテンツ制作、ロボット関連 等

健康・医療・福祉・教育関連産業

例:創薬ベンチャー、医療技術開発、再生医療、福祉用機器開発、語学等教育関連事業 等

環境・エネルギー・防災関連産業

例:クリーンエネルギー開発、次世代蓄電技術、防災に関連した製品、サービスの提供 等

貿易・観光関連産業

例:市内産品の海外販路開拓に資する事業、外国人観光客の誘致に関する事業 等


スタートアップビザ一連の流れ

スタートアップビザの申請から通常の在留資格である経営・管理ビザを取得するまでの一連の流れを解説していきます。

① 起業活動計画等の作成

② 仙台市に確認申請

③ 仙台市から確認証明書受領

④ 出入国在留管理局に在留資格認定証明書等の交付申請

⑤ 来日・起業活動開始

⑥ 出入国在留管理局に在留資格更新又は在留資格変更申請

という流れとなっております。

全体の流れとしては経済産業省認定事業、国家戦略特区とも変わりませんが、内容の違いはありますので注意点などを含めて解説を行っていきます。

① 起業活動計画の作成

スタートアップビザ取得後、6カ月以内(経済産業省認定事業の場合は最長1年)に通常の経営・管理ビザの取得ができる可能性が高いか、という観点から起業活動計画書等が見られます。

資本金は500万円以上を確保することはもちろん、経営・管理ビザの取得の可能性が高いと考える理由などを分かりやすく盛り込んだうえで計画書を作成していきます。

なお、作成した計画書は適正かつ確実なものであるかなどを中小企業診断士の方などが確認し、その意見を聞いた上で審査をすることになります。

② 仙台市に確認申請

①の企業活動計画の作成が完了したら仙台市に確認申請をします。

確認申請時の書類はその方の状況により求められるものが変わってきますが最低限、下記のような書類が必要となります。

・起業準備活動計画申請書(創業活動確認申請書)

・起業活動計画書(創業活動確認計画書)

・起業準備活動の工程表(創業活動の工程表)

・申請人の履歴書

・スタートアップビザ取得後の住居を明らかにする書類

・スタートアップビザ取得後の滞在費を明らかにする書類

・パスポートの写し

・通帳の預金残高がわかる書類

確認申請のQ&A

スタートアップビザ取得後の住居を明らかにする書類はどのようなもの?

日本に友人などがいて、その方の自宅に住まわせてもらう場合は賃貸借契約書の写しが必要になりますし、マンスリーマンションなどを借りる場合も賃貸借契約書や申込書の写しが必要になります。

また、ホテルに滞在する場合は、そのホテルを予約していることを証明できる書類を準備していただくことになります。

ちなみにホテルを予約する場合に6カ月分まとめて予約するのはかなり費用がかかってしまいますので、1カ月位の期間を予約して、その後の滞在予定を説明する書類を合わせて提出するという方法もあります。

滞在費を明らかにするにはどの位の金額が必要?

申請人が起業準備中どこに滞在するかによって変わってきますが、期間分のホテルなどの宿泊費、食費、起業準備にかかる費用分は最低限、必要となります。

また確認申請時に資本金500万円以上があることを通帳の写しで確認されます。

申請は誰ができますか?

原則として申請人が申請書類一式を仙台市経済局スタートアップ支援創業支援係までご持参いただくことになります。

郵送での受付は行っておりませんので申請をご自身で行う場合には短期滞在などで来日をしてから申請することになります。

申請人以外にも弁護士又は行政書士で所属する弁護士会又は行政書士会を経由してその所在地を管轄する地方入国管理局長に届け出た者や申請人が海外にいる場合は本邦の事業所の設置について、委託を受けている者が申請することができます。

③ 仙台市から確認証明書受領

確認申請の各要件を満たしていると認められると確認証明書が交付されます。

審査期間が2週間と記載されていますが、この2週間というのはあくまで申請書類がなにも問題がない場合になります。

そのため資料の不足や事業計画書に疑問点がある場合などは修正等を求められることもあるため、その場合ば数か月かかってしまうこともあります。

④ 出入国在留管理局に在留資格認定証明書等の交付申請

仙台市から無事に確認証明書が交付されたら次に在留資格の交付申請をするわけですが、確認証明書の有効期間は3か月となりますので、確認証明書を交付されたことに安心して有効期間をオーバーしないように管理をしっかりと行いましょう。

出入国在留管理局への申請書類は基本的に経営・管理ビザ(4カ月)で求められるような書類を提出することになりますが一度、仙台市で事業計画書の確認が済んでいる分、通常の審査よりも短期間で審査の結果が出る傾向にあります。

たまに間違った解釈をされている方がいらっしゃいますが、仙台市からスタートアップビザの確認証明書を交付されれば必ずビザの許可が出るわけではありませんので注意をお願いいたします。

⑤ 来日、起業活動開始

④で在留資格も交付されましたら、海外から来日の場合は交付後3カ月以内に上陸し、いよいよ起業活動の開始です。

起業活動中は、経済産業省認定事業の場合で仙台市が1ヶ月に1回、計画の進捗状況確認のための面談を行います。

国家戦略特別区の場合は仙台市が6カ月の間に3回の進捗状況の確認を行うことになります。

確認の際に、事業所の賃貸や従業員の雇用に関する契約状況、預金通帳等の提示を求めることがあり、進捗状況が良好でない場合は帰国を促すように指導をされることもあります。

経済産業省認定事業では6カ月の在留期間満了後も引き続き起業準備活動を行いたい場合、6カ月の在留期間の満了前に、起業準備活動計画書(更新)等を作成・提出して、その内容が経営・管理ビザの要件を満たすと判断されれば起業準備活動計画確認証明書(更新用)が交付され、仙台出入国在留管理局にビザの更新申請を行い、6か月間の期間更新を受けることが可能です。

⑥ 出入国在留管理局に在留資格更新又は在留資格変更申請

通常の経営・管理ビザの各種要件を満たせるだけの準備が整ったらビザの更新・変更の申請を行います。

申請後に無事、各要件を満たして問題ないと判断されれば通常の経営・管理ビザが取得できます。

経営・管理ビザの事業所の要件として『個室」での開設が求められておりますが、国家戦略特別区の場合はその要件が緩和され、最初のビザ更新から次の在留期限までは、コワーキングスペースでも可能となりました。認められているコワーキングスペースは「INTILAQ東北イノベーションセンター」「enspace」の2か所があります(2024年7月時点)。


どちらのスタートアップビザの方が良い?

これについてはそれぞれ長所と短所がありますので、その方の好みによると思います。

起業しようとしている業種と関連のある学歴等がある、6か月間で起業できるか不安、というのであれば経済産業省認定事業で良いかもしれませんが、毎月の進捗状況の面談は辛いとお考えであれば国家戦略特別区の方が良いかもしれません。

経済産業省認定事業に魅力を感じる方は、最長で1年間は在留できるという点にひかれているのではないかと思います。

ですが通常、6カ月の間に経営・管理ビザの要件を満たすことは十分に可能だと思いますので、経済産業省認定事業と国家戦略特別区のどちらも選択できる状況であれば、私個人としては国家戦略特別区をオススメします。


スタートアップビザは依頼したほうが良い?

一通りスタートアップビザについて解説を行っていきましたが「自分で申請するのと弁護士や行政書士に依頼するのでは、どちらが良いのだろう」と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論から言うと弁護士や行政書士に依頼をした方が良いと思います。

通常の事業計画とは異なり、スタートアップビザが求めていることをくみ取ったうえで事業計画を作成することが必要となりますし、通常の経営・管理ビザを取得するための申請も考えた際にそれらについて慣れた弁護士や行政書士に依頼することをオススメいたします。


まとめ

今回は仙台市のスタートアップビザについて解説を行っていきました。

外国人の方が日本で起業しようとすると、まだまだ難易度が高いのが現状ですが、このような制度を活用することにより、その難易度が下がる部分もあるので、活用することも一つの選択肢として取り入れるのも良いと思います。

仙台市で起業を考えている外国人の方は宮城県のeffort行政書士事務所へご相談いただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

まずはお気軽にご連絡ください。