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以前から特定技能での自動車運送業の分野が追加されるというお話が出ておりましたが、2024年の末頃から本格的に様々な動きがありましたので、今回はタイトルにもあるように特定技能での自動車運送業について解説を行っていきます。
なお、今回の内容は自動車運送業の中でもトラックに焦点を絞っていきます。
昨今、Amazonなどネットショッピングの発達により自動車運送業の需要は高いものの、よく人手不足ということを耳にします。
実際、データで見ても自動車運送業の有効求人倍率は2019年時点で3.15倍と通常の倍率の2倍を超す数値が出ており、深刻な人手不足の状況に陥っていることがわかります。
そのような人手不足解消に向けて特定技能の運送業では、5年間で最大24,500人の受け入れを見込んでいます。
人手不足を補うために特定技能外国人の力を借りるわけですが、外国人の方が行える業務内容をしっかりと理解しておかないと不法就労となってしまうこともありますので、注意が必要です。
特定技能外国人が行える主な業務は以下の通りとなります。
運行業務
運行前後の車両点検、安全な貨物の輸送、乗務記録の作成等
荷役業務
荷崩れを起こさない貨物の積付け等
上記の業務以外にも関連する業務であれば行うことが可能となっており、その例としては
・車内清掃作業
・洗車作業
・営業所内清掃作業
・その他、主たる業務に付随して行う業務
などとなり、その会社に雇用されている日本人ドライバーが、通常、業務として行う内容であれば特定技能外国人も行うことができます。
ただし、専ら上記の関連業務のみを行わせるということはできませんので注意をしましょう。
特定技能の自動車運送業(トラック)の場合は『自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック)』及び『第一種運転免許』が必要となります。
①試験受験日に満17歳以上であること
※インドネシアでの試験は満18歳以上であること
②試験受験日に有効な日本又は外国で取得した自動車運転免許を保有していること
③日本国内で受験する場合は在留資格を有していること
※日本以外の場合、ネパール・ミャンマー・カンボジア・フィリピン・インド・インドネシアで実施可能(2025年2月時点)
①CBT試験(テストセンターでコンピューターを使用して実施)
②出張試験(一般社団法人日本海事協会(この会が自動車運送業の評価試験の実施主体です)の担当者が申請者の希望する場所に出向き、ペーパーテスト方式で実施)
①運行業務
②荷役業務
③安全衛生
①学科試験
問題数:30問
出題形式:〇✕式
②実技試験
問題数:20問
出題形式:三肢択一
運行管理者等の指導・監督の下、貨物自動車運送事業における運行前後の点検、安全な運行、乗務記録の作成や荷崩れを起こさない貨物の積付けができるレベルであることを確認する観点から、実務経験2年程度の者が、事前に当該試験の準備を行わずに受験した場合、7割程度合格できる水準となっております。
学科試験及び実技試験それぞれの正答率が60%以上で合格となります。
※2025年1月の合格率は78.3%(受験者152名、合格者119名)となっております。
受験料(日本国内) | 受験料(海外) | 合格証明書発行手数料 |
5,000円(税抜) | 37米ドル※ | 14,000円(税抜) |
※為替レートの変動により価格が改定される場合があります。
運転免許の種類は大きく分けて第一種運転免許と第二種運転免許の二種類がありますが、多くの方がお持ちの運転免許は第一種運転免許になりますね。
第二種運転免許は、バスやタクシー(いわゆる緑ナンバー)などで人の運送を行って利用者から運賃をもらう場合に必要な免許となります。
特定技能で人の運送を行いたい場合は、トラックではなくバスやタクシーの分野での取得を目指すことになりますので、今回の自動車運送業(トラック)では第一種運転免許で十分となります。
ただし、車両の大きさなどにより同じ第一種運転免許でも準中型や中型、大型が必要になる場合もあるので運転免許証に記載されている内容に十分に注意しましょう。
※免許の種類などについてはこちらで詳細を解説しております。
現在、海外にお住まいの外国人の方の場合は特定技能評価試験と日本語試験に合格した後、特定活動55号の在留資格で来日して、特定活動期間(最長6ヶ月)中に自動車教習所に通所するか外免切替によって日本の自動車運転免許を取得していただくことになります。
特定技能の自動車運送業(トラック)で従事するためには、日本の運転免許を取得する必要がありますので、そのための準備を行うことができるのが特定活動(55号)という在留資格になり、申請をしようとする場合は外国人の方及び雇用先の企業は特定技能1号の申請を行う際と同様の要件を満たす必要があります。
特定活動(55号)で行うことができる活動は『外免切替等による運転免許の取得にかかる諸手続き(自動車教習所への通所を含む。)』『車両の清掃等の関連業務』とされております。
特定技能の自動車運送業(トラック)では在留期間が6ヶ月とされており更新はできませんので、その期間中に日本の運転免許を取得できなければ、特定技能の自動車運送業(トラック)の申請もできず帰国することになるので雇用先の企業もしっかりとサポートをするようにしましょう。
なお、特定活動期間は普通自動車運転免許を取得することを目的に設けられているものですので、既に普通自動車免許を有している場合に特定活動期間中に中型・大型の免許を取得することはできません。
外免切替という言葉は日常生活のなかであまり耳にしない言葉だと思いますが、外国で取得した運転免許を日本の運転免許に切替ることを言います。
各都道府県にある運転免許センターで予約をしたうえで、切替を行うことになりますが『外国の運転免許が有効であること』『外国の運転免許を取得した日から通算で3か月以上その国に滞在したことが証明できること』という条件がありますので注意が必要です。
外免切替を行える年齢は各運転免許の種類によって変わってきます。
免許の種類 | 年齢等 |
普通免許・準中型免許 | 18歳以上 |
中型免許 | 20歳以上 準中型免許、普通免許または大型特殊免許を現に受けているもので、これらの運転免許のいずれかを受けていた期間が通算して2年以上(海外における運転経歴を含む) |
大型免許 | 21歳以上 中型免許、準中型免許普通免許または大型特殊免許を現に受けているもので、これらの運転免許のいずれかを受けていた期間が通算して3年以上(海外における運転経歴を含む) |
必要書類等については、以下の通りになります。
・外国免許証
・外国免許証の翻訳文
※当該外国の大使館、領事館または日本自動車連盟(JAF)、ジップラス(株)で翻訳したものに限る。
・住民票
※国籍または本籍記載の発行日から6か月以内のもので、個人番号(マイナンバー)の記載がないもの。
・パスポート
・写真1枚(縦3㎝×横2.4㎝)
・日本の運転免許証をお持ちの方は、日本の運転免許証
※有効なもの、失効しているもの問わず
上記は宮城県で求められている書類になりますが、詳細については各都道府県の運転免許センターにお問い合わせください。
切替申請の流れは
①必要書類の確認、審査及び面談
②知識・技能の確認(後日予約制)
③適性試験(視力等)の合格
④知識・技能の確認の合格
⑤免許証の作成・交付
となっておりますが、一部の国では知識・技能の確認が免除となりますので上記の②④を抜いた流れとなります。
必要となる日本語能力については、試験によりその能力を有していることを証明することが必要となり国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験(N4以上)の合格が必要となります。
なお、自動車運送業のトラックの場合、技能実習2号を良好に修了した者(職種・作業の種類に関係なく)は先に挙げた日本語試験が免除されます。
出入国在留管理庁のHPには受入れ機関(雇用先)の条件について下記の内容が挙げられております。
①国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」(以下「協議会」という。)の構成員になること。
②協議会に対し必要な協力を行うこと。
③国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと。
④道路運送法(昭和 26 年法律第 183 号)第2条第2項に規定する自動車運送事業(貨物利用運送事業法(平成元年法律第 82 号)第2条第8 項に規定する第二種貨物利用運送事業を含む。)を経営する者であること。
⑤一般財団法人日本海事協会(明治 32 年 11 月 15 日に帝国海事協会という名称で設置された法人をいう。)が実施する運転者職場環境良好度認証制度に基づく認証を受けた者又は全国貨物自動車運送適正化事業実施機関 (貨物自動車運送事業法(平成元年法律第 83 号)第 43 条に規定する全国貨物自動車運送適正化事業実施機関をいう。)が認定する安全性優良事業所を有する者であること。
⑥登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、協議会の構成員となっており、かつ、国土交通省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託すること。
また、特定技能外国人を雇用する場合は直接雇用(フルタイム)となる点には十分に注意しましょう。
ザックリとした流れとはなりますが、特定技能外国人が就労を開始するまでの流れは以下の通りとなります。
①求人・登録支援機関等への相談(支援を委託する場合)
②内定・雇用契約の締結
③協議会等の加入
④入管申請書類の作成・申請(特定活動55号)
⑤入国
⑥外免切替等で日本の運転免許取得
⑦入管申請書類の作成・申請(特定技能1号)
⑧乗務開始
※日本の運転免許を取得していない場合になります。
今回は、特定技能の自動車運送業の中でもトラックの分野に絞った解説を行っていきました。
次回以降で残りのタクシー、バスについても解説を行っていきますので是非、ご覧いただければと思います。
effort行政書士事務所では、代表が過去に自動車学校で指導員を行っていたという経験から「外国人ドライバーを雇いたいけど、どうしても運転が不安…」という企業様向けに安全運転研修のご提案なども行っておりますので、ご興味がある方はお気軽にご相談頂ければと思います。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。