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(2025年6月更新)
現在の日本は世界でも類を見ない速さで高齢化が進み、それに伴い労働人口の減少という深刻な課題に直面しています。
その結果、様々な業界で人手不足が深刻化しているのが現状です。
この状況に対し、多くの外国籍の方々が日本で活躍されていますが、これまでは彼らが働ける職種に制限があり、例えばコンビニエンスストアの店員や工場の生産ラインといった現場で働くことが難しいという問題がありました。
もしかすると、「近所のコンビニで外国籍の方が働いているのを見たことがあるぞ?」と思われるかもしれません。
多くの場合、留学ビザや家族滞在ビザを持つ方が「資格外活動許可」を得て、原則週28時間までという制限の中で働いているか、あるいは永住者のように就労制限のない方が働いているケースがほとんどです。
また、「技能実習」という制度で日本に来ている外国籍の方々も多くいらっしゃいます。
建設業や製造業など、いわゆるブルーカラーの職種で活躍されていますが、この制度は「人材育成を通じて開発途上国へ技能を移転し、その国の経済発展を促す国際協力」が本来の目的です。
そのため、就労そのものを目的とはしておらず、行える作業の範囲や在留できる期間に多くの制約がありました。
こうした課題を解決し、より多くの外国籍の方々が日本の人手不足を支えられるよう、2019年に新設されたのが「特定技能ビザ」です。
このコラムでは、日本の未来を支える新たな在留資格である特定技能ビザについて、その全体像を分かりやすく解説していきます。
目次
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つのビザが存在します。
特定技能1号と2号では、在留期間、家族の帯同の可否、そして求められる技能水準において明確な違いがあります。
あなたの会社がどのような人材を求めているのか、そしてどれくらいの期間、どのように活躍してほしいのかによって、適切な特定技能ビザの種類は変わってきますので、それぞれの特定技能ビザがどのような特性を持ち、どのような外国人材が対象となるのかを詳しく見ていくことは、あなたの会社の事業計画に合致した外国人材の採用を検討する上で重要な情報となるはずです。
これらの違いを理解することは、あなたの会社と外国人材双方にとって安定した雇用関係を築く上で非常に重要ですので、それぞれ見ていきましょう。
まずはじめに、特定技能1号と2号について簡単な比較表をご覧ください。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
分野 | 16分野 | 11分野 |
在留期限 | 上限5年(通算) | 上限なし |
家族帯同 | 基本的には認められない | 要件を満たせば可 (配偶者、子) |
日本語レベル | 生活や業務に必要な日本語能力 (試験あり) | 生活や業務に必要な日本語能力 (試験なし) |
技能水準 | 試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人の方は免除) | 試験等で確認 |
分野の数や在留期限など様々な違いがありますので、特定技能1号と2号それぞれ詳しく見ていきましょう。
特定技能1号のビザで行える活動は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動」となっておりますが、これはどのような意味を持つのでしょうか。
ズバリ、特定技能1号は即戦力として期待される外国人材を想定しており、日本の産業現場で人手不足が深刻な分野において、ある程度の経験や知識を既に持ち、すぐに業務に取り組めるレベルの技能が求められています。
特定技能1号のビザで働けることのできる分野は16分野となっております(2025年6月時点)。
今回は特定技能の基本に関する解説ですから、各分野の詳細については、また別の機会に行っていきます。
介護 | ビルクリーニング | 工業製品製造業 | 建設 |
造船・舶用工業 | 自動車整備 | 航空 | 宿泊 |
自動車運送業 | 鉄道 | 農業 | 漁業 |
飲食料品製造業 | 外食業 | 林業 | 木材産業 |
もともと特定技能1号では12分野が対象となっておりましたが、新たに「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」が追加されて現在の分野数となっております。
特定技能1号のビザでの在留期間は通算最長5年となります。
ただし、1度、特定技能1号を取得すれば初めから5年間の在留期間が保証されるというわけではありません。
取得後は1年を超えない範囲で在留期間が決定され、その期間を迎えたら更新を行っていき、最終的には5年まで日本に在留することができるという意味合いになります。
※ 特定技能1号で5年を迎えたら…詳細はこちら。
特定技能1号のビザでは原則として家族の帯同が認められておりません。
これは特定技能1号は特定産業分野の人手不足を解消することを目的とされており、短期間での労働力の確保を重視しているために家族の帯同は想定されていないためです。
ただし、例外的なケースとして、既に日本に在留している家族がいる場合は、特定の条件を満たせば引き続き日本に滞在できる場合があります。
例えば、留学などの別のビザで日本に滞在しており、既に配偶者や子が「家族滞在」のビザで日本にいる場合、本人が特定技能1号に在留資格を変更した後も、配偶者や子は「特定活動」というビザに変更して日本に在留が認められることがあります。
また、特定技能1号の外国人同士の間に日本で生まれた子についても、両親が引き続き日本に在留する見込みがあれば、特定活動が認められることがあります。
日本で特定技能外国人が円滑に業務に従事し、生活していくためには一定の日本語能力が不可欠です。
特定技能制度の目的である人手不足の解消を達成するためにも、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有すること」が基本とされ、加えて「業務上必要な日本語能力水準」が求められます。
具体的に、適切な日本語能力を有しているかどうかは、以下のいずれかの方法で判断されます。
技能実習2号を良好に修了した外国人材については、原則として日本語能力試験等による証明は不要とされています。
これは技能実習期間中に業務上必要な日本語を習得していると判断されるためです。
職種・作業の種類に関わらず適用されるため、即戦力となる可能性が高い人材として期待できます。
ただし、すべての分野で一律にN4レベルが求められるわけではありません。
一部の特定産業分野では、より高い日本語能力が要求されるため注意が必要です。
特定技能外国人の採用を検討する際には、雇用を予定している特定産業分野の日本語能力に関する要件を事前にしっかりと把握して、適切な日本語能力を持つ人材を受け入れることで、スムーズな業務遂行と外国人材の安定した雇用の定着に繋がるでしょう。
特定技能1号のビザには、「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能」が求められます。
これは、単に作業ができるだけでなく、ある程度の経験に基づいた判断力や応用力が期待されることを意味します。
具体的には、この技能水準は以下のいずれかの方法で確認されます。
技能実習2号を良好に修了した場合、技能評価試験が免除されることになります。
ただし、技能実習の2号を良好に修了すれば無条件で技能評価試験が免除されるわけではなく、「技能実習2号を良好に修了しており、かつ、従事しようとする特定技能の業務と、技能実習2号で経験した職種・作業との関連性が認められる場合」に限られる点には注意しましょう。
次に、特定技能制度のもう一つの柱である「特定技能2号」のビザについて詳しく見ていきましょう。
特定技能2号を持つ外国人材が行える活動は、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」とされています。
特定技能1号が「相当程度の知識又は経験」だったのに対し、特定技能2号では「熟練した技能」が求められています。
これは単に業務をこなせるだけでなく、その分野における深い知識と豊富な経験に基づいた、指導的立場や応用力の高い業務を遂行できるレベルを指します。
長期的な戦力として、あるいは将来のリーダー候補として外国人材を育成したい場合に、この特定技能2号が重要な選択肢となるでしょう。
特定技能1号のビザでは、16分野での受け入れが可能でしたが、特定技能2号のビザでは「介護」「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」を除く11分野での受け入れが可能となっております。
ビルクリーニング | 工業製品製造業 | 建設 |
造船・舶用工業 | 自動車整備 | 航空分野 |
宿泊 | 農業 | 漁業 |
飲食料品製造業 | 外食 |
現在、特定技能1号で受け入れが可能な「介護」分野は、特定技能2号の対象とはなっておりませんが、これは介護福祉士の資格を持つ外国人が取得できる「介護ビザ」と呼ばれる在留資格がすでに存在し、このビザが高度な専門性と技術・知識を要件としており、家族の帯同も認められているためになります。
特定技能1号と比較して、特定技能2号の大きな特徴の一つが、在留期間の上限にあります。
特定技能2号では、在留期間の上限が定められておらず、実質的に無期限での在留が可能となります。
これは、熟練した技能を持つ外国人材を長期にわたり安定的に雇用し、事業の継続的な発展に貢献してもらう上で極めて重要なポイントです。
しかし、「無期限」とは言っても、永住者のように更新の必要がなくなるというわけではありません。
特定技能2号の在留期間は、個々の審査に基づいて「3年、1年、または6月」のいずれかの期間が指定され、その期間が満了するごとに、在留期間の更新申請を行う必要があります。
更新の際には、引き続き特定技能2号の活動を行っていることや、法令を遵守していることなどについて審査されます。
この「実質的な無期限」というのは、特定技能2号が日本の産業に根差し、長期的なキャリアを築くことを目指す外国人材にとって大きな魅力となりますし、特定技能2号として日本に長期間在留することで、将来的には永住権の申請要件を満たす道も開けます。
特定技能1号では原則として家族の帯同が認められていませんでしたが、特定技能2号では、外国人材が母国から配偶者や子を呼び寄せ、日本で一緒に生活することが可能となります。
これは、特定技能2号が長期的な就労と定着を目的としているためであり、家族を大切にする外国人の方が安心して日本での生活基盤を築く上で非常に大きなメリットです。
日本に呼び寄せることができる家族の範囲は、以下の通り明確に定められています。
なお、親、兄弟姉妹、その他の親族などは特定技能2号の家族帯同の対象外となりますので、この点にはご注意ください。
特定技能2号の外国人材を受け入れる際には、この家族帯同の制度を理解しておくことが重要です。
家族の帯同は、外国人材のモチベーション維持や長期的な定着に大きく影響します。
外国の方の家族の受け入れに関して質問を受けた際、適切に案内できるよう、制度の内容を把握しておくことをお勧めします。
特定技能2号を取得しようとする場合、すでに特定技能1号として一定期間日本で就労していることがほとんどで、その業務遂行に必要な日本語能力を有しているとみなされるため試験等での確認は不要とされていますが、「漁業」「外食業」の分野では日本語能力試験N3以上の取得が必要とされております。
特定技能2号で行う活動は、「熟練した技能を要する業務に従事する活動」とされており、特定技能1号で求められる「相当程度の知識又は経験を要する技能」よりも一段と高いレベルが求められています。
「熟練した技能」を証明する方法は、主に以下のいずれかになります。
ここまで特定技能1号と2号がどのようなビザなのか、また、その違いなどについて解説を行ってきましたので、次に企業側と外国人側でそれぞれ知っておくべき特定技能ビザのメリットとデメリットについて触れていきましょう。
特定技能外国人材を受け入れるにあたって得られるメリットは主に以下の4つ内容が挙げられます。
特定技能ビザは、日本国内で特に人手不足が深刻な特定分野での就労を可能にした在留資格です。
この制度がまず、もたらす最大のメリットは、まさに喫緊の課題である労働力不足の解消にあります。
採用難が続く中で、貴社が求める人材を安定的に確保できることは、事業の継続性や成長戦略において極めて重要な要素となるでしょう。
特定技能1号のビザで認められているのは、「特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務」です。
さらに、特定技能2号では「熟練した技能を要する業務」への従事が可能となります。
これらの活動を行うには、外国人が各分野で定める技能水準試験に加えて、多くの場合、一定の日本語能力試験にも合格している必要があります。
これにより、企業は採用後すぐに現場で活躍できる、即戦力となる知識と技術、そしてコミュニケーション能力を備えた人材を安心して雇用できるという大きなメリットが得られます。
特定技能制度が創設される以前は、労働力不足が特に深刻な工場勤務、接客業、自動車整備業などの分野で企業が外国人材を安定的に確保することは非常に困難でした。
それは、永住者や定住者、日本人の配偶者など、就労制限のない身分系の在留資格を持つ人を除けば、多くの外国人は留学や家族滞在といったビザで原則週28時間の「資格外活動」の範囲内でしか働くことができず、これでは企業が本当に求めるフルタイムでの継続的な労働力として外国人材を雇用するのは現実的ではなかったためです。
しかし、特定技能ビザの導入により、特定技能外国人材であれば、従来の週28時間という活動制限を受けることなく、日本人と同様にフルタイムで勤務することが可能となりました。
さらに、特定技能2号への移行が可能な分野であれば、在留期間の上限が撤廃され、熟練した技能を持つ外国人材を無期限で雇用し続けることができるようになります。
これにより、事業を支える持続的で安定した労働力を確保し、長期的な人材定着を促進する上で大きなメリットとなります。
多くの企業が実感していることとして、日本とは異なる文化や背景を持つ外国人材が加わることにより、職場に新たな視点と活力がもたらされます。
具体的には、外国人の方が持つ独自の視点から既存の業務プロセスやサービスに気づきが生まれ、改善のきっかけとなることがあります。
また、多様なバックグラウンドを持つ従業員間のコミュニケーションが活発になることで、職場の雰囲気はより明るくオープンになる傾向があります。
さらに、外国人材が持つ仕事への真摯な姿勢や高い学習意欲、勤勉さは、日本人従業員にとっても良い刺激となり、職場全体のモチベーションアップや生産性向上にも繋がるでしょう。
次に、特定技能外国人材を雇用するにあたって主に注意すべき点を4つに絞って紹介しますので、それぞれ見ていきましょう。
特定技能は、同じ特定産業分野内であれば転職が認められています。
もちろん、これは特定技能に限った話ではありませんが、より良い条件や職場環境を求めて人材が流出してしまうことは、企業にとってリスクであるといえます。
そのため、特定技能外国人材に長く定着してもらうためには、受け入れ企業側の努力が不可欠です。
日本人従業員と同等以上の福利厚生の提供、良好な職場環境を整備することに加え、定期的な面談や相談体制の構築を通じて、彼らが安心して働けるよう手厚いサポートを心がけることにより、人材の定着率向上に繋がるようにしましょう。
就労ビザで外国人材を雇用する場合、特定技能ビザに限らず、ビザの申請手続きが必要となってきます。
日常的にこれらの手続きを行っている企業は稀であり、多くの企業にとっては不慣れな業務が大きな負担となる可能性があります。
特に特定技能1号の場合、外国人材が日本で安心して生活・就労できるよう支援計画の作成と実施が義務となっており、この支援業務も企業にとって新たな負担となり得ます。
しかし、ご安心ください。
この支援業務については、後述する登録支援機関に業務を委託することが可能です。
専門知識を持つ登録支援機関に支援を委託することで、企業の負担を大幅に軽減できます。
ただし、委託する場合には別途費用が発生するため、コストと業務負担のバランスを考慮した検討が必要です。
特定技能制度において、雇用する企業の都合による安易な解雇は認められていません。
これは外国人材の権利を保護するための重要なルールです。
もし企業が不当な解雇を行った場合、それ以降の特定技能外国人材の受け入れが著しく困難になる可能性があります。
こうした事態を避けるためにも、雇用契約を締結する際には、労働条件や会社のルール、期待される役割などを外国人材に明確に伝え、双方でしっかりと合意形成を行うことがとても重要です。
後々の誤解やトラブルを防ぎ、安定した雇用関係を築くようにしましょう。
特定技能外国人材の雇用を検討する際、多くの企業が直面するのが人材紹介会社に支払う紹介料です。
自社で直接人材を探すケースは少なく、専門の人材紹介会社を介することが一般的であるため、このコストは無視できません。
人材紹介料は、採用する外国人材の年収の20%~35%程度に設定されていることが多く、日本人を採用する場合と比較して高額になる傾向があります。
特に複数の人材を同時に採用する場合や、予期せぬ早期離職が発生した際には、その経済的負担はさらに大きくなる可能性があります。
このため、人材紹介会社を選定する際には、料金体系を事前にしっかり確認し、複数の会社を比較検討することがとても重要です。
また、万が一の早期離職に備えて契約内容に返金規定が設けられているかも確認しておくことをおすすめします。
特定技能雇用契約と聞くと何か難しそうに感じるかもしれませんが、特定技能外国人と受け入れ企業との間で結ばれる雇用契約のことになります。
出入国在留管理庁によると下記の基準を満たすことが必要とされております。
出典:出入国在留管理庁
特定技能1号で働く外国人の方は、「相当程度の知識または経験を必要とする技能」を活かす業務に従事させる必要があります。
具体的には、分野別運用方針および運用要領で定められた水準の技能に該当する業務であることが求められます。
特定技能2号については、さらに高度な「熟練した技能」が求められます。
同様に、定められた技能水準を満たす業務に従事させる必要があります。
そのため、本来の技能とは無関係な単純作業や雑務ばかりを任せるような場合は、これらの基準に違反するおそれがあるので、受入れ機関としては、当初の目的に沿った適正な業務内容を設計することが重要となります。
特定技能で雇用される外国人の方については、同じ職場で働く日本人の通常の労働者と同じように、所定労働時間が均等である必要があります。
つまり、外国人だからといって不当に短く設定したり、逆に過度な労働を強いることは認められていません。
この基準は、労働条件において差別的な取り扱いを防ぎ、外国人労働者が安定した環境で働けるようにするための重要なルールです。
所定労働時間の設定については、労働契約書や就業規則との整合性を確認し、通常の正社員やフルタイム労働者と同様の扱いになっているかをしっかりと見直すことが求められます。
特定技能で雇用される外国人の方に支払う報酬(給与)は、同じ職務内容に従事する日本人労働者と比較して、同等以上でなければなりません。
これは、日本人と外国人との間で不当な格差が生じないようにするための重要な基準です。
具体的には基本給だけでなく、各種手当や賞与、時間外手当なども含めた「総報酬額」で比較する必要があります。
また、最低賃金の遵守はもちろんのこと、労働契約書や給与明細の内容が明確であることも求められます。
報酬条件が不適切であると、在留資格の審査にも影響を及ぼす可能性がありますので、十分な配慮が必要です。
報酬はもちろん、それ以外の待遇面においても外国人であることを理由に差別的な扱いをすることは禁止されています。
例えば、以下のような対応が問題となります:
このような取り扱いは、特定技能制度の趣旨に反し、在留資格の継続や更新にも支障が出る可能性があります。
外国人であっても、日本人と同様に働く仲間として公正な待遇と成長の機会を保障することが求められています。
特定技能で働く外国人の方が一時帰国を希望した場合、受入れ機関は業務に著しい支障がない限り、有給休暇や無給休暇など、何らかの形で休暇を取得できるよう配慮することが求められています。
たとえば、労働基準法上の年次有給休暇をすでに使い切っている場合であっても、追加の有給休暇の付与や無給での休暇取得といった対応を検討し、できる限り本人の希望に沿った柔軟な対応を行うことが望ましいとされています。
このような対応は、外国人労働者が安心して働ける環境づくりにもつながり、企業と外国人双方の信頼関係の構築にも大きく貢献します。
特定技能で働く外国人の方を、労働者派遣法や船員職業安定法に基づく派遣労働者として雇用する場合には、その派遣先と派遣期間をあらかじめ明確に定めておく必要があります。
これは、外国人労働者が不安定な立場に置かれることを防ぎ、雇用の透明性と安定性を確保するための重要なルールです。
派遣先や期間があいまいなままでは、受入れの適正性が認められない可能性があるため、労働契約書などにおいて、具体的かつ明確に記載しておくことが求められます。
特定技能で働く外国人の方が契約期間満了や事情により帰国する際、自ら旅費を負担できない状況にある場合には、受入れ機関がその旅費を負担する必要があります。
これは、外国人労働者が経済的な事情により不法滞在や在留資格の失効といった問題に直面することを防ぐために設けられている重要なルールです。
また、単に旅費を用意するだけでなく、契約終了後の出国が円滑に行われるよう、必要な案内や手続き支援などの措置を講じることも求められます。
特定技能で雇用する外国人の方が、安心して日本で働き生活できるようにするためには、受入れ機関による継続的な生活支援が不可欠です。
そのため、受入れ機関は外国人の健康状態や生活環境の状況を定期的に把握し、必要に応じて適切な支援や相談対応を行うことが求められます。
たとえば以下のような対応が含まれます。
外国人が孤立せず、職場でも地域でも安心して生活を送れるような体制づくりが、受入れ機関の大切な役割となっています。
特定技能制度では、業種ごとに定められた「分野別運用方針」や「分野別運用要領」に基づいて、それぞれ特有の基準が設けられています。
そのため、受入れ機関は、自社が対象とする分野(例:介護・外食・建設など)における特定の基準や条件を正しく理解し、それに適合していることが必要です。
※ 特定技能ビザの要件 ( 雇用契約 ) についてはこちら。
次に、受入れ機関自体が満たすべき基準については、下記の内容とされています。
出典:出入国在留管理庁
こちらについては項目が多いため、いくつかまとめて解説を行っていきます。
受入れ機関は労働基準法や社会保険、税務関連の法令をしっかりと守っていることが大前提です。
過去に重大な違反歴がある事業者は特定技能外国人を受け入れることはできません。
また、労働者派遣により特定技能外国人を受け入れる場合は、派遣元・派遣先の双方が適正であり、特に派遣先も同様の法令遵守基準を満たしている必要があります。
外国人を受け入れる企業には、過去1年以内に以下のようなトラブルがないことが求められます。
さらに、受け入れ後も雇用契約を安定的に継続できるよう、体制や人員の整備が求められます。
単に「雇えばよい」という考えではなく、計画的な雇用管理体制が整っていることを意味します。
外国人との契約内容や業務内容を明文化し、その文書は契約終了から1年以上の保管が義務付けられています。
また、労使間のトラブルを防ぐために以下の点が禁止されています:
書面による明確な合意と、適切な給与支払いで信頼関係を築くようにしましょう。
保証金の徴収や高額な支援費用の負担を外国人に押し付けるような問題が社会問題化していました。
そこで特定技能制度では以下のような制限があります:
簡単に言ってしまうと、受入れ機関が費用面でも外国人を保護する責任を持つ、という考え方です。
特定技能外国人の安定した定着には、地域の理解と協力が不可欠です。
そのため、地方公共団体からの「共生社会」への協力要請があった場合、受入れ機関にはできる限り協力することが求められます(例:地域イベントや日本語教育支援などへの協力)。
介護、建設、農業など、特定技能には分野ごとに独自の基準が設定されています。
たとえば建設分野では、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録が必要となる場合があるなど、分野特有の要件があるため、事前確認が不可欠です。
この分野ごとの独自の基準については、別のコラムで解説を行っていきます。
※ 特定技能ビザの要件 ( 所属機関 ) についてはこちら。
特定技能では、外国人の方への支援が必要となりますので、支援に関する基準は以下の通りとなります。
出典:出入国在留管理庁
登録支援機関にすべての支援業務を委託する場合、受入れ機関は支援体制に関する詳細な基準を自ら満たす必要はありません。
ただし、自社で支援を行う場合には所定の基準を満たすことが条件とされています。
たとえば、支援責任者や支援担当者は、過去2年以内に中長期在留者(就労資格者)の受入れや管理、生活相談等の実績を持つ役職者から選任する必要があります。
外国人が理解できる言語で支援を行える体制があること、支援内容の記録や書類を雇用契約終了後1年以上保管すること、支援計画に基づいた支援を着実に実施できることなども求められます。
さらに、支援の放棄歴がないことや、外国人との定期的な面談を行える体制、分野ごとの特定基準に適合していることも含まれます。
これらの基準は、外国人が不安なく働き、生活できるようにするための支援体制の最低条件です。
そのため、自社で支援を行う場合は、事前にこれらの条件を十分に確認し、整備する必要があります。
特定技能1号では、外国人の方が日本で安心して暮らし、働けるようにするために、支援の実施が義務付けられています。
この支援には、義務的支援と任意的支援の2種類があり、まず対応が必須とされるのが義務的支援です。
義務的支援には、生活ガイダンスや日本語学習支援など、外国人が日常生活を円滑に送るために必要な支援内容が含まれており、具体的な項目は以下のとおりです。
出典:出入国在留管理庁
これらの支援については、今後別のコラムで詳細に解説を行っていく予定ですが、注意しなければならない点があります。
支援の中には、外国人が理解できる言語での対応が求められるものや、対面での実施が原則とされているものも含まれており、運用要領に沿わない対応をしていると、「支援を適切に実施していない」と判断される恐れがあります。
そのため、制度の運用要領を正確に理解した上で、適切な支援体制を整えることが重要です。
なお、任意的支援についての例を挙げてみると、母国語による定期的な相談窓口の設置や、キャリア形成を見据えた講習の実施などが該当します。
任意的支援は義務ではありませんが、外国人との信頼関係を築き、長期的な定着につなげるうえで非常に効果的な取り組みとなります。
※ 特定技能ビザの支援計画についてはこちら。
ここまで支援体制について見てきましたが、「自社でこれらの支援をすべて実施するのは難しそう…」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、日常的に外国人と接する環境が整っていたり、過去に外国人従業員を雇用した経験がある場合には、それほど大きな負担にはならないかもしれません。
しかし、多くの企業にとっては、語学対応や生活支援のノウハウ、人員の確保など、支援を自社だけで行うのはハードルが高いのが現実です。
そのような場合に活用できるのが、「登録支援機関」です。
受入れ企業は、登録支援機関に対して支援業務を委託することが可能です。
委託には全部委託と一部委託の2つの形がありますが、一部委託を選んだ場合、受入れ企業が自らも支援に関する基準を満たす必要があるため、支援体制に不安がある場合は全部委託を選ぶのが無難でしょう。
そして、支援の経験や知識が社内に蓄積されてきたら、将来的に自社で支援を実施する体制へと移行することも視野に入れると良いでしょう。
段階的にノウハウを育てながら、より柔軟で自立的な受け入れ体制の構築を目指すことが理想的です。
次に特定技能外国人に関する基準ですが、以下の通りになります。
出典:出入国在留管理庁
特定技能外国人としての受け入れにあたっては、本人の年齢や健康状態に加え、保証金の徴収がないことや生活費等の条件にきちんと同意していることが必要です。
また、送出し国の制度を守っているか、希望する分野の要件を満たしているかなども確認され、これらの基準を満たしていることが適正な在留と就労の前提になります。
なお、「特定技能1号のみの基準」「特定技能2号のみの基準」については、初めに解説をした特定技能1号と2号の違いを徹底比較!永住権への道も解説での内容と重なる部分が多いため、割愛させていただきます。
※ 特定技能外国人の詳細についてはこちら。
特定技能1号での就労を開始するには、外国人本人の状況に応じて複数のルートがあります。
たとえば、「海外から新たに来日するケース」や、「もともと留学などの在留資格で日本に滞在しているケース」、あるいは「技能実習2号を良好に修了して特定技能に移行するケース」などが代表的です。
どのルートをたどるかによって、必要となる手続きや準備期間が異なりますが、以下の資料をご覧いただくと、それぞれの流れが一目で分かりやすく整理されています。
出典:出入国在留管理庁
スケジュール全体を把握しておくことで受け入れ企業側も余裕をもって対応でき、外国人本人にとっても安心して来日・就労を迎えることができるようになります。
特定技能制度は、労働力不足に直面する多くの業界において、即戦力となる外国人材を受け入れる有効な選択肢となっています。
仙台市をはじめとして宮城県内でも、製造業・建設業・介護・外食業などを中心に、特定技能外国人の受け入れを検討する企業が増えています。
とはいえ、制度の仕組みや要件を正しく理解していないまま進めてしまうと、法令違反や支援不備といったリスクにもつながりかねません。
本コラムでは、制度の概要から受入企業・外国人本人に求められる条件、就労開始までの基本的な流れについて解説しました。
今後は、「分野別の受け入れ要件」「登録支援機関の選び方」「仙台・宮城での活用事例」なども、別コラムでわかりやすくご紹介していく予定です。
特定技能制度を正しく活用し、地域に根差した持続可能な人材確保・外国人との共生を進める第一歩として、ぜひご活用ください。
※ 特定技能ビザの料金はこちら。
※ 特定技能ビザでのアルバイト雇用についてはこちら。
※ 特定技能ビザでの脱退一時金についてはこちら。
※ 特定技能1号で5年働いた後についてはこちら。